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企画アルバム『Road to 老後 CM王への道』音楽評論家・平山雄一氏による解説およびメンバーインタビュー掲載!

こんなアルバム、見たことない。もちろん聞いたこともない。頼まれてもいないのに、CM曲を作ってしまう。しかも全9曲のアルバムにして発売してしまうとは!
音楽を広める手段としてCMタイアップは重要なアイテムだが、まずCMをしたい相手があってこその話だ。
しかし『Road to 老後 CM王への道』はそのセオリーを堂々と無視して制作された。自分たちが作りたいものを作る。
それをCMに利用するかしないかは、相手の都合次第。「使いたいと思ったら連絡ください」と世に問う方法で『Road to 老後 CM王への道』は誕生した。
これは問題作と言わねばならない。だってこんなアルバム、見たことも聞いたこともないのだから。

 カーリングシトーンズのリーダー寺岡シトーンが『Tumbling Ice』について「まさか2枚目のアルバムを出せるとは思わなかった。しかもツアーにも出られるなんて奇跡ですよ」と語っていたが、その一ヶ月後に初の企画アルバム『Road to 老後 CM王への道』がリリースされる。
立て続けに起こる奇跡に、嬉しくて空いた口がふさがらないファンも多いことだろう。
そもそもカーリングシトーンズというバンド自体が奇跡なのだ。だからこそ、この快進撃を拍手をもって迎えたいと思う。

 6人のメンバーはそれぞれに活躍するロック・ミュージシャンであり、親友であり、ライバルでもある。
超個性的な彼らが、ひとつのバンドに収まることで起こることのほとんどは、奇跡なのである。
そして『Road to 老後 CM王への道』は、そんなカーリングシトーンズの特性が100%発揮されたスーパーアルバムなのである。

 キッカケはカーリングシトーンズを題材に2020年に制作されたフジテレビ特番『オレたちカーリングシトーンズ』だった。
番組内のあるコーナーをヒントに、メンバーがリレー形式で即興で曲を作るプロジェクトがスタート。
以前から奥田シトーンが発信していたYouTubeチャンネル内の企画「カンタンテレタビレ」を本拠地にして、「イントロ」「Aメロ」「Bメロ」「サビ」「大サビ」「エンディング」の6パートをそれぞれが作って1曲に仕上げる。
こう書くと簡単そうだが、普通のミュージシャンには絶対にできない(やらない?)離れ業なのである。

「くじで順番を決めて、6人でAメロBメロ…って作っていくやり方がなかなか斬新で。それをたくさんやりたいがために、CMの曲を作ろうみたいな理由をつけて、勝手にどっかのCMで使われるような曲を作ってった。要するにひとりずつ作って、それを足して1曲にするっていうのが面白かったから」と奥田シトーンはプロジェクトの動機を語る。
まさしく「6人でやって面白いことなら何でもやる」という“シトーンズ精神”にもとづいたアイデアだった。

「その結果、このプロジェクトは成功したんですか?」と問うと、奥田シトーンは「そうでもないでしょ。CM王になったかどうかって言ったら、全然なってないよね。北見市の焼き肉屋さんが来てくれた以外、パン屋さんが一軒。それくらい?(笑)。ただオレらとしては、こうやって勝手にやってる感じがよかったですけどね」とあっさり答えてくれた。
その笑顔は、このアルバムの制作過程をメンバー全員が楽しんだこと=成功を表わしていた。 

 メンバーに『Road to 老後 CM王への道』についてミニインタビューをしてみた。

――『Road to 老後 CM王への道』でどの曲が好きですか?

浜崎シトーン いい曲がたくさんあって、なんかこう、ホントに、愛おしいよね。

奥田シトーン 俺はホームセンターのCMの「あなたの手」が、相当いいと思う。キングシトーンが曲をちゃんと締めてるし。 

斉藤シトーン オレは自転車屋さんのCMの「そこのけサイクリング」が好きですね。最近、サイクリングロードにたまに行ったりしてるんですけど、昔、近所の田舎のサイクリングロードに行ってたことを思い出す。

――渡良瀬遊水地とか?

斉藤シトーン いや、もっとマイナーな姿川っていうとこがあったんですけど。そこのサイクリングロードに小学校時代にみんなで自転車で行ってた。途中に遺跡があって、掘ればいっぱい土器とかが出てくる。そういうイメージがあの曲を聴くとバーって浮かんでね。好きですよ。

奥田シトーン だから斉藤シトーンの作ったところはちょっと憂いがあるんだね。

斉藤シトーン そうなのかな?

奥田シトーン 急にあそこだけなんかこう、いい曲みたいになってるもん。

斉藤シトーン (笑)

――キングシトーンはどの曲が好きですか。

キングシトーン 「LA・LA・LA RAMEN SONG」だね。僕、ドラム叩かせてもらったんで、それは覚えてますね。楽しかったー。

斉藤シトーン 楽しそうだったもん(笑)。

トータスシトーン 音に出てるよね、それが。

奥田シトーン ちょっと間違えて、「あっ?!」ていう顔をした次の瞬間、もう笑ってた(笑)。

寺岡シトーン 僕はいちばん最初に作った「パンのうた」かな。

奥田シトーン 番組の中で作った。

寺岡シトーン そう。作って、CDに焼いて、実際、パン屋さんに届けに行った。

浜崎シトーン あと「カレーの衆」は、ちょっとファンク。

キングシトーン カッコいいよね。ちょっとサイケで。

奥田シトーン ラップやってるしね。

浜崎シトーン ラップやったり、そこはちょっと面白い。新しいシトーンズっていうところが気に入ってます。

 楽しそうに振り返るメンバーたち。そんなアルバムが楽しくないわけはない。即興で作り継ぐから、メンバー自身もどんな曲になるのか分からずに制作が進む。
そのハラハラドキドキとニコニコ感が歌詞やメロディやサウンドに表れる。おそらくこの世界初の試みは、他に類のないエンターテイメントになっている。

またこのアルバムに収められた楽曲をCMに使ってほしい相手設定も、実にシトーンズらしい。
飲んだり食べたりが大好きなメンバーたちが、いつもお世話になっているパン屋さんや焼き肉屋さん、カレー屋さんなどの店内BGMを想定して作っていったという。
他にも自転車屋さんやホームセンターなど、生活に潤いを与えてくれる業種のCMソングもある。ただ彼らはコロナ禍でツラい思いもしている。
そうした人々を気遣っての音楽作りは、これもまたカーリングシトーンズならではのユーモア&ウィットと言えるだろう。
困った時こそ、みんなで楽しさを分け合う。バンド・ミュージックを経験する中で6人が得た最良の生き方が、このアルバムに詰まっている。

――この企画は続きそうなんですか?

浜崎シトーン やれって言われればいつでもやるけど。

――やるんすか?(笑)

トータスシトーン なんか頭の体操にいいよね。曲作りのウォーミングアップ的な。だからこういうことやってると、常に曲作りの筋トレをやってるような感じはある。

奥田シトーン 週に一回、日曜日に大喜利やるのといっしょですよね。

トータスシトーン そうやね。それはけっこう大事かもね(笑)。

嬉しいことに、続編も期待していいようだ。 

アルバム『Road to 老後 CM王への道』に同封となるDVD・Blu-rayは、2020年の特番『オレたちカーリングシトーンズ』の完全版で、カーリングシトーンズの代表曲のライブ映像や、往年のバラエティ番組ネタに挑戦するメンバーの貴重映像が収録されている。

この秋は、カーリングシトーンズが掲げる自由で痛快な生き方を、世界唯一の企画アルバム『Road to 老後 CM王への道』を通して目一杯楽しみたいものだ。

                                                        Text by 平山雄一