2016年2月6日。福岡サンパレスホールは、詰めかけた2000人でビッシリ埋まっていた。今夜、この場所で開催されるのは『世良公則 60th Anniversary LIVE「Birth」〜タカガウマレタヒ〜』。昨年12月14日に60歳になった世良の記念イヤーに組まれた特別な公演であり、世良公則×GUILD9というバンドスタイルでの、2011年以来のライヴとなる。


開演予定時間の19時。ほぼ定刻に世良がステージ中央でギターを掻き鳴らし、シャウトする。これを合図にオレンジの照明が灯る。轟くドラム、世良と野村義男(G)が客席ギリギリまで進み出て、ギターをストロークする。オープニングナンバーは、「good time, show time」。熱を帯びた、ドロッとしたロックが絡みつき体の奥底まで流れ込んでくる。躊躇や照れといった心の枷を瞬く間に溶かしていく。

世良を始めステージ上の5人の音のやり取りは、真剣での居合の応酬のよう。歌が溜めを欲すれば気持ちを瞬時に読んで、野村、神本宗幸(Key)、櫻井哲夫(B)、横瀬卓哉(Dr)が音を伸ばし、攻めに転じればスピード感を出す。ヒリつきながら、それでいて奏者がそれを楽しんでいるが故にワクワク感も運んでくる。そんな音楽に魅了され観客席では、世良と同世代かさらに年配の方、50代、40代、30代……あらゆる世代のオーディエンスが、全身でリズムをとり、拳を振り上げている。彼らの手拍子、声、歓声がステージを刺激し、音楽の一部となっていくのがわかった。

会場を巻き込んだセッションはまだまだ広がりを見せる。ライヴ中盤、「Heart Is Gold」を歌い終えた世良が言う。


「素敵なロックンロール野郎を1人紹介しようと思います」。


呼び込まれたのはアコギを手にした宮田和弥だった。「子供の頃ツイストをテレビで観ていた」という彼と、ギターを置いて白いマイクスタンドの前に立つ世良。2人が歌うのは「さらば愛しき危険たちよ」。宮田がJUN SKY WALKER(S)で発表したナンバーだ。ティーンの青く淡い感情や大切な決意を、50歳になった宮田と世良が声を重ね歌う。その歌は、聴く者に“イカシタ大人になれたか?”という問いを投げかけてくる。そのままの編成での「あんたのバラード」を挟んで、つるの剛士を呼び込み、世良、ブルースハープを持ち出した宮田の3人がフロントに立った「宿無し」。世良&宮田が披露するマイクスタンド・アクションに対抗して、40歳のつるのはチャック・ベリーばりのステップを披露する。

世良×GUILD9&つるの剛士で「銃爪」をプレイしたあと、もう1人ゲストが登場。「チョコチョコ会うわりにステージで一緒に音楽を奏でるのは初めてだね」と世良が話し掛けるアーティストは同じ広島にルーツを持つ奥田民生である。この3人が揃えば、届くのはもちろん、奥田が2人のために詞曲を書き下ろした“「いつもの歌」世良公則feat.つるの剛士”である。ロックンロールへの敬愛と、節々に奥田民生節が練り込まれたこの曲、生で聴くそれはブルースのように生活の中で響く音楽だった。

さらに世良×GUILD9&奥田民生という形で、奥田が詞を提供したツイストの「からまわり」、世良が『UNDER COVER』でカバーしたこともある奥田の曲「さすらい」が演奏される。肩肘の力を抜き地に足を付けて、さすらい続ける、歌い続ける。そんな2人のロックンロールは、会場に居るすべての人を飲み込んでいった。

アンコール。世良とツイスト時代からの盟友である神本による「とびきりとばしてRock'n Roll」を経て、世良公則×GUILD9、奥田、宮田、つるのが、ステージに揃う。放たれた曲はローリング・ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」。偉大なレジェンドのルーツミュージックを4人が歌う。そこには年齢の差はない。同じく転がり続ける7人のロックミュージシャンが存在するだけだ。

ラストの「燃えろいい女」を世良、奥田、宮田、つるのが熱唱している。そして全員の呼吸を合わせて最後の1音を締めた、と思ったら誰かが、“燃えろ”と、どす声で歌い出す。その繰り返しを5度、しかも楽しみながら本気でやる。そんなイカシタ大人の姿に、心の深部から笑いが込み上げてくる。そして、思う。時間にして約2時間半。今夜響いたすべての音楽は日常に転がる、哀しみ、怒り、憤り……それらを和らげココロに喜びを注いでくれた、アイノウタだったな、と。

この音楽は明日を進む力になる。

大西智之

さらに詳しい福岡公演ライブレポートは、4月8日発売の創刊30周年を迎えたB-PASSが新たに立ち上げた、大人が楽しめる音楽雑誌『B-PASS ALL AREA』vol.3に世良公則独占インタビューと共に16ページの大特集で掲載決定!